トウモロコシのフリント種自殖系統「Ho87」の育成とその特性
W.特性概要
1 粒質および早晩性
  粒質は“フリント”である。絹糸抽出期は,5か年平均で早生の「CM37」および「CMV3」に比べてそれぞれ2日および4日早い7月24日であり,中生の「Ho49」より8日早い。このことから,早晩性は“極早生”に属する(第5表)。

2 病害抵抗性
  接種検定試験でのすす紋病罹病程度は,本病抵抗性が“やや弱”の「CM37」並かやや高かった(第6表)。同じく接種検定試験でのごま葉枯病罹病程度は,本病抵抗性が“弱”の「CM37」および「CMV3」より大幅に低く,“やや強”の「Ho49」よりやや低かった(第7表)。黒穂病の罹病は,系統間差異が認められた8試験中,2試験でのみ見られ,その際の罹病個体率はいずれも2%程度と低かった。罹病個体率の平均値は本病抵抗性が“やや強”の「CM37」よりやや低く,雌穂罹病個体の全罹病個体率に対する割合は約6割で,「CM37」より低かった(第8表)。これらのことから,「Ho87」の病害抵抗性程度は,すす紋病には“弱”,ごま葉枯病には“やや強”,黒穂病には“強”と判定された。

3 耐倒伏性
 倒伏個体率は,北農研と十勝農試のいずれにおいても比較系統より低かった。北農研では耐倒伏性が“強”の「Ho49」でも倒伏個体率が20%以上であったのに対し,「Ho87」の倒伏個体率は2.5%にとどまった。また,十勝農試では「Ho87」の倒伏発生は皆無であった。これらのことから,「Ho87」の耐倒伏性は“極強”と判定された(第9表第10表)。

4 採種特性
 放任受粉条件での採種量は5か年平均で41.0kg/aで,早生のデント種自殖系統および中生のフリント種自殖系統「Ho49」より高かった。本系統の採種性は,極早生系統としては極めて高く,十分に実用的な水準にあると考えられた。また,花粉飛散程度は“やや良”であった(第11表)。

5 一般生育特性および雌穂・粒の特性
 「Ho87」の生育初期の草丈はいずれの比較系統よりも高く,初期生育に優れている。また,稈長は低く,着雌穂高は稈長が同程度の「CMV3」より約15p低い。稈径は細い。分げつの着生はない。雄穂長および枝梗数は「CMV3」および「Ho49」と同程度で,平均的である。雌穂は,円錐型でやや長く,やや太い。粒列数は平均11.0列とやや少ない。子実は橙色,丸形で,百粒重は32.1gと大きい(第12表第13表)。

6 固定度
 「Ho87」の形態形質および開花期についての変異係数は第14表に示すとおりで,これらの系統内変異は比較系統とほぼ同程度であった。したがって,「Ho87」の固定度は既存の自殖系統と同程度であると考えられる。

7 組合せ能力
 「Ho87」を片親とする単交雑F1組合せについて,主要特性の平均値を第15表に示した。これらのF1組合せの平均乾物総重は同熟期の普及品種とほぼ同等であった。また,これらのF1組合せは,乾雌穂重割合が高く,倒伏個体率がやや低かった。これらのことから,本系統の組合せ能力は高いと判断される。  一方,本系統を種子親とし,北方型フリント種自殖系統「To85」を花粉親として育成された単交雑F1品種「ぱぴりか」は,第16表および第17表に示すように普及品種「エマ」並の熟期で,「エマ」と比較して初期生育に優れ,乾雌穂重割合が高く,すす紋病抵抗性が強かった。  以上の試験結果から,「Ho87」は“極早生”の熟期で,耐倒伏性が強く,組合せ能力が高く,採種性に優れ,寒地向きのF1親自殖系統として有用であることが示された。
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農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター